職場のめんどくさい上司に信頼される必要などない? 井上智介さんにきいてみる

『あの人がいるだけで会社がしんどい……』がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学 井上智介 深水英一郎

今回は職場にいるめんどくさい人から自分を守る方法についての本を執筆した、井上智介さんにお話をききます。書名は「『あの人がいるだけで会社がしんどい……』がラクになる 職場のめんどくさい人から自分を守る心理学」です。

 上司、部下、同僚、お客さんなどの中に、いますよね、めんどくさい人。あっ、いや、僕の周りにはいないんですけどね(汗)! でもでも世の中の職場にはさまざまなめんどくさい人がいるそうなのです。著者の井上さんは精神科医でありそして産業医として毎月30社以上の企業を訪問し1万人以上の相談を受けてきたとのこと。そこでの経験をもとにした具体的なアドバイスが書いてあるのが本書なのです。

 それでは早速、著者に著書のこと、きいてみましょう!

【著者 井上智介さんプロフィール】
https://twitter.com/tatakau_sangyoi
精神科医・産業医。産業医としては一般的な労働の安全衛生の指導に加え、社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員にカウンセリング要素を取り入れた対話を重視した精神的なケアを行う。精神科医としてはうつ病、発達障害、適応障害などの疾患の治療だけではなく、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも力をいれている。

——本日はよろしくお願いします。今回の本、どのような内容なのか教えてください。

【井上さん】
 私たちがストレスを感じる対象って「自分で思い通りにできないもの」なんです。そして、その代表が「他人」なんですよね。つまり、人間関係です。私たちはどんな人間関係でもストレスを抱えてしまうものなのです。とくに職場の人間関係はプライベートとは違って、コントロール度はとても低いので悩みの種になりやすいのです。

 本書はそのような環境下でどのようにして他人と距離をとっていけばよいかや、自分の心を健全に守りながら働いていけばよいかについて書かせてもらいました。

 この本で紹介した自分の心を守る方法は、私が産業医や精神科医として、実際に相談者さんが効果があったと感じてもらった方法ばかりを紹介しています。

 そもそも相手によって、人間関係の距離の取り方も異なるので、上司・部下・同僚・お客さんのように相手別に対応方法を分けて、より現場での使いやすさを重視しました。

——本書では冒頭「めんどくさい人」を分類して考え方や対応方法について書いてあります。その内容が具体的で、悩んでいる人が実際試せそうなので良いなと思いました。

 めんどくさい相手であっても、なかなか相手を変えることはできないので、自分がどのように対応するかによって受けるダメージは変わってきます。それを避けるためには、今までの価値観を変える必要もでてきます。

 いつも正面からぶつかる必要もなく、自分を守るために腹黒くなることも必要です。ただ、それでもめんどくさい相手が上司である場合と部下やお客さんである場合とでは、対応は違ってきます。なので、できるだけ現場に即したかたちで、具体的なシーンを想定して書かせてもらいました。

——「ことを荒立てたくない、相手との関係を平和に保ちたい人がターゲットになりやすい」という言葉もありました。そういう人が身を守るためには心優しいままではだめで腹黒くなるぐらいがちょうどよいということなんですね。

そうですね。ほかには「他人のいうことを100%真に受けずに、『~しなければいけない』などの義務感を感じすぎないようにする」、「心の中までいい人でいようとしない。」、「オドオドしたりせずに、相手の言動に反応しすぎない」ということは心がけて欲しいです。(本書P.45~48あたり参照

 さらに、どれだけストレスを軽減させても、心へのダメージは蓄積してしまいます。そのため、しっかりと自分をいたわってほしいです。それには心のメンテナンス方法を身につけておく必要があります。とくに会社のなかの人間関係のトラブルは、他の誰かが救いの手を差し伸べにくく、自分で自分を守る必要がありますから。(6章全般的な話)

——井上さんがとくにこの本の内容を届けたいと思っているのは、どんな人ですか?

 職場のめんどくさい人は、相手に恐怖心、罪悪感、義務感などを感じさせてコントロールするのが上手です。なので、その被害者になりがちな、いつも誰よりも周りの空気を読んで自分の意見を抑えこんでいる人だったり、いつも多少の自己犠牲もいとわないと思って行動してしまう心優しい人には防御法を知る意味でも読んで欲しいですね。

——「めんどくさい上司に信頼される必要はない」という井上さんの言葉には驚きました。信頼を得られない状態で、その後の仕事には影響ないのでしょうか。

 自分のことを信頼して欲しいと思うなら、まずは相手を信頼するところから始まります。なので、めんどくさい上司を信頼することから始まるのですが、ほとんどの場合それは無理な話でしょう。

——たしかに。

 どうせ無理だと思うものに時間やエネルギーを割くのはとても苦痛です。そのため無理なものは無理と割り切って、業務に滞りがないような範囲での最低限の関係をめざすことをおすすめしています。

——産業医の先生に相談する際のコツって何かありますか?

 だいたいどこの会社でも、産業医との相談の時間は限られているので、事前に話す内容はまとめてきてもらえるとスムーズです。そして、もし既にあるなら「自分はどうしたいか」という内容が言語化できていると、一緒に同じ方向を向いて問題解決に取り組みやすいです。

——なるほど、スマホや手帳に相談したいことをメモして、自分なりにどうしたいか考えておくとスムーズに話しが進んで良い、ということですね。最後に井上さんの今後の活動について教えてください。

 はい、今まで通り、精神科医や産業医として目の前の相談者さんを大切にしつつ、実際にお会いできないけど生きづらさを抱える人の心を軽くできるような活動ができたらと思っています。

 2022年1月からVoicyという音声アプリでもパーソナリティとして活動をはじめましたので、ぜひ聴いてください。

——本日は、ありがとうございました!

(了)

※初出:おたくま経済新聞

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