堀元見『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』1万字インタビュー

堀元見『ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律』

 今回は、「ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律」著者の堀元見(ホリケン)さんにお話をききます。気づいたら1万字超えてました。

 この企画のきっかけは、「ビジネス書ってなんか同じようなことばっかり書いてない?」という素朴な疑問。そのことを解明すべく、ヒットしたビジネス書の中から100冊を選んで分析し、教えを抽出するという荒行に挑んだそうです。なによりすごいのはそれらの作業をすべてLIVE配信しながらやったということ。まるでゲーム実況のようにビジネス書を読み、配信は毎回大盛りあがり。その成果が今回書籍となって結実しました。この企画を産み出した本人は一体どのような考えで挑んだのでしょうか。

 著者のホリケンさんに早速話をきいてみましょう。

※このインタビューは本書発売前におこなったものです。

▼書籍DATA
「ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律」(堀元見著、徳間書店)2022年4月16日発売

▼著者 堀元見(ほりもとけん)さんプロフィール
https://twitter.com/kenhori2
(たぶん)世界で唯一のインテリ悪口専業作家。慶應義塾大学卒業後、就職せず「インターネットでふざける」を職業にする。
初年度の年収はマイナス70万円。2019年に開始した「インテリ悪口で人をバカにする有料マガジン」がウケてそれだけで生活できるようになったため、インテリ悪口作家を名乗り始めた。飲み会で職業を聞かれると「悪口を書いてます」と答えて相手を困惑させている。著書「教養(インテリ)悪口本」を2021年12月に出す。他の代表作に、YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」などがある。

■ 書いた人にきいてみる

ホリケン:堀元見、著者
ふかみん:深水英一郎、ききて

(ふかみん)
 ホリケンさん、よろしくお願いします。表向き、今回の本はどんな本ということになっているんでしょうか?

(ホリケン)
 はい、今回の本は、「ビジネス書ベストセラーを100冊読んで分かった成功の黄金律」というちょっと長いタイトルになってまして。

 ビジネス書を100冊読み漁って、100冊分の全部の教えをスプレッドシートにまとめ、共通しているものとか、異なっているところとかを上手に選び出せば、最強の黄金律が得られるんじゃないか、という実験を書籍にしたものです。

 100冊のエッセンスが、その中に詰まっている。教えを一冊に凝縮した、大変コスパの良い本になっています。

(ふかみん)
 面白い実験ですね。これ一冊でビジネス書100冊読んだことになるならほんとコスパも良いし時間の節約にもなりますね。内容の方に踏み込んでみたいのですが、この本の魅力についてもう少し教えてください。

(ホリケン)
 本の構成をしっかり考えて、面白くなるように並べました。

 例えば「ひとつのことをやり続ける」という教えが出てくる本があるんですが、「ひとつのことをやり続けない」という教えが出てくる本もあるんです。

(ふかみん)
 あはは、真逆ですね。

(ホリケン)
 そう、真逆なんですよ。なのでそれらを並べて章を立てる、などしてみました。

 「ひとつのことをやり続ける」の横に「ひとつのことをやり続けない」が並んでいるわけです。

 普通にビジネス書をパラパラ読んでいると気づかないような矛盾を明らかにするような構成になっています。100冊一気に読んで、こんなことする本、今までなかったと思います。

(ふかみん)
 100冊のエッセンスをまとめて読める、というだけではないんですね。

(ホリケン)
 エッセンスだけではなくて100冊読むことによって気づく面白い部分が浮き彫りになるよう、恣意的に並べてあります。面白い発見があると思います。

 有り体に言えば、ビジネス書ってめちゃくちゃばかり書いてるな、という発見を皆さんにしていただける。そんな作り方になっています。

■ まるでゲーム実況のような本の実況

(ふかみん)
 100冊のビジネス書を読んでいる過程って、ずっとYouTube LIVEで生配信していましたね。

(ホリケン)
 そうです。全部リアルタイムで配信しながら、本を読んでスプレッドシートにまとめていきました。

(ふかみん)
 実は私、ライブ配信に関わる仕事を長年やっていたんですが、本を読むだけで面白いライブ配信ができるなんて想像したことなかったです。

 朗読とか輪読配信はあるにはあって、書籍をネタにした意義ある配信はできると思うんです。でもこれだけ面白いエンターテイメントになる、というのは想像してませんでした。このタイプのライブははじめてみました。

(ホリケン)
 確かに、他にはないライブ配信だと思います。

(ふかみん)
 堀元さんはまるでゲーム実況でもやるかのようにビジネス書の読書配信を生放送でやって、適切にツッコミを入れて面白くしている。これはもう天才かと。

 単に朗読してるだけじゃなくて、先読みして瞬時に要約しながら適切にいじってる。他の人が真似しようと思ってもできないものだとは思うのですが……何かコツみたいなものがあるんでしょうか。

(ホリケン)
 これは僕の特殊能力なんじゃないかと思ってまして。あのライブは情報処理するものが非常に多いんですよね。

 ビジネス書を読みながらそこから入ってくる情報を処理し同時に喋る。そして、スプレッドシートに要点をメモしていく。それをやりながらチャットや、スーパーチャット(投げ銭つきチャット)のコメントを読んで、面白いものは拾っていくんです。

(ふかみん)
 とんでもない情報の処理量です。そもそもライブ配信って、録画編集した動画よりかなり高度な情報処理をしていて、リアルタイムに視聴者を飽きさせないよう、次何を話すか先読みして考えながら進行していくんです。

 編集は効かないですし、台本通りにやっても面白くないから、アドリブが多い。一瞬でもつまらないと、視聴者がどんどん抜けていきますから、一定の面白さを常にキープして、次に期待させなくちゃいけない。ライブであれをやっているという時点ですでにレベルが高い。それに加えて本を読んでるわけですから。

(ホリケン)
 言葉でこれをやっている人はあまりいないんじゃないでしょうか。普通は真似できないようなことをできていると思ってます。

 僕、ライブ配信の時に、真に受けてふざける、っていうのはすごくやってますね。

(ふかみん)
 どういうことでしょう?

(ホリケン)
 ネットで活動している人って、知識人タイプか芸人タイプに分かれると思うんですね。

 知識人タイプの人って、ビジネス書を読んでわけわかんないことが書いてあると、否定しちゃうと思うんですよ。「そんなわけないだろ」と一蹴して終わる。

 それに対して芸人タイプの人は、阿呆のフリをしてでもその話に追随し、引き立てていく。

 普通はその2つのタイプに分かれるんですが、僕の芸風では、「馬鹿じゃないの、そんなわけないでしょう」と言った上で、そのわけわかんないことに乗っかってめちゃくちゃはしゃぐ、ってことをやってます。それが独自のポジション取りではあるかもしれませんね。

■ ライブ配信が濃厚なコンテンツを生み出す

(ふかみん)
 今の盛り上がりの話もそうですけど、この一連の企画の中で一番面白いのって、ライブ配信なのかなと感じてます。こんなこと書籍のインタビューで言ったらまずいのかもしれませんが。コンテンツの中心がライブ配信にある。

 僕もラジオを聴くような感覚で堀元さんのYouTube LIVEを見てました。気づいたのが、まずみなさんのコメントがセンス良くて面白い。

 いい意味でみんなで楽しんで、一種の共犯者的な関係性ができている。堀元さんを中心として「わかっている仲間たち」が集まってきている、という感覚がありますね。そしてはしゃいだ結果として、書籍が作品として残り、その作品への社会の反応もまた楽しもうとしている。

 今、関連コンテンツは

1.YouTube LIVE(読書しながらのリアルタイム長時間ライブ「衒学チャンネル」)
2.切り抜き動画(ライブを見やすく編集した動画)
3.書籍

 この3層になっていて、それぞれ見ている人の数が

1.YouTube LIVE 同時接続数 600ぐらい。アーカイブ再生2万~5万。最も濃い層
2.切り抜き動画 動画再生数2万~15万
3.書籍(まだ発売前につき部数不明)

 これぐらいですね。ここがレイヤー分けされているからライブ配信がより面白くなっているような気がします。ホリケンさんのリズムに乗っていける人がライブに集まって面白いコメントでさらに盛り上がるという好循環ができている。

(ホリケン)
 多分、バランスみたいなものがあって、コンテンツの濃さで言えば書籍が一番濃いと思うんですよ。

 僕自身、読みやすい文章を書くということについては長けていると自負しておりまして。すぐ読み終わるんですよ、この本。難解な表現や読みづらい表現を一切なくして、主語と述語との対応関係も死ぬほどわかりやすくしてます。濃度という意味では、本はぎゅうぎゅうに詰まっているのですが、読みやすいので2時間もあれば読み終わります。

 ライブ配信と書籍の中間が切り抜き動画ですね。今、僕の切り抜きチャンネルは主に2つありまして、その方たちが切り抜いてくれてます。

 層としてはおっしゃるように3つあって、

1つめはライブ配信をほとんど欠かさず見てくれている層
2つめは切り抜きチャンネルだけを見ている層
3つめは書籍しか読まない層

 これらは楽しさの度合いが全く違うと思うんですよね。

 書籍だけでも十分楽しめるように書いたつもりですが、それでも「本1冊」という面白さの限界はありますよね。

 やはりこの本を一番楽しめるのは、ライブ配信を見ている層じゃないかなと思います。コメントで本作りに参加した感覚があったり、本にはとても書けない悪い話で盛り上がった思い出があったり、背景情報が圧倒的に多いですから。

■ ライブ参加者と作り出す共犯関係

(ふかみん)
 一緒に作った作品、という感覚に近いんですかね。

(ホリケン)
 もちろん、ライブ配信を全部リアルタイムで見てコメントをして楽しむのは、時間もかかります。ただ、コストを注ぎ込んだらその分面白くなる。

(ふかみん)
 共犯者的な面白さもありますね。

(ホリケン)
 怒られちゃうかもしれませんが、これって参加型現代アートなんじゃないかなと考えていて。

 Amazon レビューについても、みんなで、普通に役立つ本だと書いて、わかってない人に買わせる、ということも含めて作品として楽しんでいただけたらいいのかなと思ってます。

(ふかみん)
 今まだ発売前ですが、これで書籍を買う人がどれくらいいるのか。楽しみですね。

(ホリケン)
 もう予約はじまってるのですが、私のフォロワー数でこの予約数はすごいと出版社の人にほめられました。

(ふかみん)
 ほんとにエッセンスが書いてある真面目な本だと思って予約してる人、もういるかもしれませんね。

(ホリケン)
 もう怒ってる人、いるみたいですよ。

(ふかみん)
 もう怒ってるんですか。

(ホリケン)
 まだ本が出てないのに怒ってる人、います。

 togetterで誰かが「ビジネス書に完璧に擬態した『ビジネス書を全力で茶化す本』が発売されてしまう」といった形でまとめてくれていて。コメント欄で「こんなの詐欺だろ」と怒ってる人がいました。

■ パロディという形での社会貢献

(ふかみん)
 僕は今回の企画、堀元さんの社会貢献なんじゃないかなと思ってるんですよね。ビジネス書の実態を暴く、というところまで突っ込んでいけた人ってこれまでいなかった。だってビジネス書ってある程度地位のある人がお小遣い稼ぎや影響力拡大のためにやっている商売なわけで、そこに正面から斬り込んでいくのって、なんか怖いじゃないですか。

 夏祭りで屋台のくじ引き全部買って、「当たりが入ってないですよ」って言う。YouTuberヒカルさんのような、そんな強さが必要ですよね。

 ビジネス書を片っ端から読んで「似たような引用ばかりで中身が薄いですよ」と言うだけでなく、ビジネス書というビジネスの正体を暴きつつ、ビジネス書のパロディまでやる。ためらいなくそこに突っ込んでいって、おかしいと思うことに声をあげたってのがすごい。ビジネス書ビジネスって半分ファン商売のような側面があるとはいえ、それは中身が薄いことの言い訳にはならないわけで。

 実際100冊ビジネス書を読んでみることによってビジネス書のビジネスの構造が明らかになった。みなさんなんとなく、薄々気づいていたことを明確に変だよ、と言えるようになった。これは大きい。堀元さんが膨大な労力を割いてくれたおかげなわけで、これは社会貢献だと思います。

(ホリケン)
 ありがとうございます。

■ 一生懸命ビジネス書を読むのがバカバカしくなる本

(ふかみん)
 そしてそれが読みやすい形でエッセンスとしてまとまってるってのも面白いポイントです。「教え」を知りたければ、堀元さんの本で読めるようになっているわけなので。これ一冊あれば、しばらくは薄いビジネス書を読まずに済むわけです。

 堀元さんがYouTube LIVEで言ってたけど、10年ぐらいしたらまた新しい薄いビジネス書がたくさん出てくるはずなので、更新必要かもしれないですが。その時はまた堀元さんの更新された本を買えばいい。私達は薄いビジネス書という束縛から解き放たれて、無駄なお金と無駄な時間を使う必要がなくなります。

(ホリケン)
 今回の本を通して、社会に一石を投じられたら面白いですよね。

 Twitterで「読書アカウント」を名乗っているものを見ると、「鉄板おすすめ本100冊」みたいなことを言って、「メモの魔力」をすごくオススメしてたりするんですよ。僕に言わせれば役に立たない本なんですが。流行りのビジネス書をリストアップしているだけで、本質に迫る本をおすすめしていない。
(「メモの魔力 -The Magic of Memos-」前田裕二著、幻冬舎)

 そして、それに対してキレている人がいるんですよ。軽薄な本ばかり勧める人がいて、こんなの読書家でもなんでもないだろう、と怒っている人がいる。こういった不毛な争いがいつまでも続いています。

 考え方のぶつかり合いなので、それを見てても誰も面白くはないんですよね。

 で、面白くするとしたらこのやり方だな、と考えてやってみたのが、今回の新著なんです。

 「一生懸命ビジネス書を読んでいるのがバカバカしくなるような本」でありながら、そのことを直截に言わず、ビジネス書の教えをまとめた本という形に落とし込んだ。これが新著でやったことです。

 おっしゃるように、これが最終的に社会貢献のようなものになると面白いなと考えています。

■ 薄いビジネス書の教えたちが集まったらどうなる?

(ふかみん)
 薄いビジネス書に関しては、「なんか変だなとうすうす感じていたけど、調べることに時間をかける人はいなかった」ということなんでしょうね。賢明な人であればそもそも読まないですし、賢明でない人であれば、そもそもおかしいと気づかないものなので。それを明らかにしながら、さらに面白くなる手法を創り出してエンタメ化した、というのが堀元さんの才能だなと思います。

(ホリケン)
 気に入っている章がありまして。

 「会議には出ない」という章と「会議でとるべき行動」という章がそれぞれあって。これ読み返すと自分でもめっちゃ面白いんです。

 「会議には出るな」っていろんなビジネス書にたくさん書いてあるんです。特に堀江貴文さんとかそうです。

 でも、会議に出たらこれをやりなさい、という教えもいろいろあって。会議に出たらやるべき行動、というのが例えば

「前のめりで、どんどん発言しなさい」
「最前列に座りなさい」

 なんですが、これってつまりヤル気MAX系ですよね。それに対して真っ向から反対する教えもあって

「会議中にはスマホをいじりなさい」

 というものもある。

(ふかみん)
 教えを並べていくと、めちゃくちゃなことになっていくんですね。

(ホリケン)
 しまいには「祈る」という教えも出てきます。

 「成功している人は、なぜ神社に行くのか?」という本に出てきます。32万部のベストセラーとなっている本ですね。ずっとスピリチュアルなことが書いてあります。祈れば会議室は神社になるので、不毛な会議がいい空間になります、という教えです。
(「成功している人は、なぜ神社に行くのか? 」八木龍平著、サンマーク出版)

(ふかみん)
 みんなてんでバラバラのこと書いてますなぁ……。

(ホリケン)
 その章の最後にまとめをしてるんですが、その部分そのまま読みますね。

「つまりまとめると、会議に出るときは最前列に座ってスマホをいじりながらタブーをどんどん発言し祈りを捧げて会議室を神社化すると良い」

(ふかみん)
 わはは、こんな会議、話しが進まねぇ!

(ホリケン)
 こういうことですね、ビジネス書ってそれぞれむちゃくちゃなことを書いてるんで。

(ふかみん)
 なんでめちゃくちゃになっちゃうんでしょうね。

(ホリケン)
 そこに答えなんかないから、でしょうね。当然、ケース・バイ・ケースになるわけで。

(ふかみん)
 そうですね、ケース・バイ・ケースというのもその通りですし、たまたまうまく行った人が、「自分はこうやった」というのを書いてるだけ、というのもありそうですね。たまたま運良くうまくいったものを違う状況でやっても、再現しないわけで。

(ホリケン)
 「Think clearly」という本が今回読んだ100冊の中にあって、それに出てくるすごく良い教えがあります。

 「反論の余地がないものには近づかないようにしよう、なぜならそれはイデオロギーだから」というものです。

 まさにだいたいのビジネス書って「俺はこうやって成功したから、お前らもこれをやれ」という反論の余地のない書き方をしてあるんです。
(「Think clearly 最新の学術研究から導いた、よりよい人生を送るための思考法」ロルフ・ドベリ著、安原実津訳、サンマーク出版)

■ 無能のアヘン

(ふかみん)
 それにしてもビジネス書というビジネスは、なぜ成立しているんでしょうね。

(ホリケン)
 うーん、なんでしょう、みんな救われたいんだろうな、という気はしているんですよね。

 僕が昔からいじっている「レンタル話し相手」という人がいるんですけども。彼は努力をしたくないので、いつもそれらしい理論武装をしているんです。

「勉強をせずにありのままで成功できる、ということを示して、いろんな人に希望を与えたい」

 というわけのわからないことを言って勉強をサボる、みたいなことをしている。おそらく、それに近いんじゃないでしょうか。

 「地道にコツコツ努力をすれば成功に近づく」ということに、みんな気づいているけども、めんどくさいからそれはやりたくない。だから、成功しそうな法則が書いてある本を読んで成功に近づいた気分になりたい、ということなのではないでしょうか。

 自己啓発書のことを僕は「無能のアヘン」と呼んでます。

 無能のアヘンとして産業が成立している。そういうことなんじゃないかと思います。だからすごくまっとうな、「地道にコツコツがんばったらいいよ」という、華のないつまんない教えがあっても売れなくて「これから先はプロセスを見せるプロセスエコノミーが鍵だ!」みたいなことを言ってたら売れる、ってことになるのではないでしょうか。

(ふかみん)
 簡単に気持ちよくなりたい人たちが相手なので、そういう人たちが求める、簡単で気持ちいいことを言わなくちゃならない、つまるところ、大衆に迎合しないと売れない、ということなんですね。

(ホリケン)
 今回の100冊の中に「GIVE&TAKE」というまともな本があるんです。
(「GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代」アダム グラント著、楠木建監訳、三笠書房)

 これからは人に惜しみなく与える人(ギバー)が成功する時代だ、という内容です。この本のAmazon レビューで、大笑いするとともにその後泣きそうになったものがあって。何が書いてあったかというと「この本は買わなくていい。中田敦彦のYouTube大学で十分」というもので。

(ふかみん)
 これはかなしい……。

(ホリケン)
 中田敦彦さんがこの書籍の内容を粗い解像度でまとめたYouTube動画があるんです。そもそもこの書籍はちゃんとした学者の方が書いた本で、実験データやその統計、その他の事例等を背景にしっかり紙幅を割いて執筆されているんですよ。賢明じゃない人は、そういうデータを読み解くとかそもそも統計に価値を感じられないので、とにかく、相手のためになることをやろうと思えばいい、という粗いまとめになっていて。

 まさに無能のためのアヘンこそが求められていて、説得力のある根拠や統計データを元にした本って難しいものとして敬遠されて逆に売れないんだな、ということに気づいたんです。

(ふかみん)
 ファスト読書、ファスト教養の話にも繋がりますね。要約動画や図解があるからもう本買わなくていいやん、というところまできているという。ファスト映画は、違法性があるとして排除されましたが、ファスト読書・ファスト教養はどうなるのでしょうね。

(ホリケン)
 一定の層にはかなりニーズはあるものなので、これがなくなることはないと思います。

 ファスト映画に関しては著作権の明確な侵害であるという、排除する法的な論理がはっきりしています。しかし、ファスト教養コンテンツはそうではないんですよね。

■ 薄ビジネス書ビジネスの将来

(ふかみん)
 薄いビジネス書の問題のひとつとして、引用が多く、オリジナルの部分が少ない、というものがありますよね。これ、全体の何パーセントがオリジナル、みたいな品質表示ができたら面白いんじゃないかなと思うんですが。フルーツの糖度を測るように、ビジネス書の品質検査をして、「オリジナル◯%デス」みたいな。

 これを今回人力でやったのが堀元さんなんですが、堀元さんが全部のビジネス書を巡回検査してまわるわけにもいかないので、これが自動化できたら面白いのになーと無責任に思ってるんですよ。それができれば、それらしいビジネス書を自動生成するAIも作れるかもしれない。

(ホリケン)
 ですね、そういうの作れそうだなーと、僕も思ってます。

(ふかみん)
 堀元さん作ってくんないかなーと……。

(ホリケン)
 いやいや、めんどくさいですよね、それ! でも、学習データも十分にあるし、いけそうな気はしますね。

(ふかみん)
 将来そんな形でビジネス書のベストセラーが生まれるかもしれませんよ。

(ホリケン)
 物理学者のアラン・ソーカルという人が、ポストモダン思想家の文体を真似て内容の無い論文を書いて、ポストモダン思想専門の学術専門誌に送ったら掲載された、という「ソーカル事件」というものがありまして。

 ビジネス書をAIに書かせてそこそこ売れたら、現代版ソーカル事件みたいになるかもしれませんね。

(ふかみん)
 売れたら元取れますよね。もしかしたらもう作っている人いたりして。「会議中は、◯◯をせよ」みたいなことをつぶやいたら、どばどばっとビジネス書の原稿が湧いてくる、みたいな。

(ホリケン)
 実際、明確にゴミと言えるようなものも売れてるわけですし。実現可能な気もします。

■ 100冊の著者からの反応

(ふかみん)
 ところで、取りあげた100冊の著者さんからは反応がきてたりするんでしょうか?「読みたいことを、書けばいい。」の田中さんから反応あったんですよね。
(「読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術 」田中泰延、ダイヤモンド社)

(ホリケン)
 YouTube LIVEでコメントしてくださいまして。スパチャまでいただいてしまいました。

(ふかみん)
 著者からスパチャもらったんですね。これは新しい。田中泰延さんの「読みたいことを、書けばいい。」は、今回の100冊で一番おもしろかった本、とおっしゃってましたね。ホリケンさんは基本辛口なので、褒めている本はすごく読みたくなりますね。田中さんの本も早速買って読んでしまいました。

 これからビジネス書を作る人は、堀元見氏をうならせるような本を目指して欲しいですね。

■ アウトプットするとき意識していること

(ふかみん)
 堀元さんがアウトプットする時に、意識していることって何でしょうか?

(ホリケン)
 必ずしも自分の本音を言う必要はなくって、面白くなる方にひたすらフォーカスする、ということを意識しています。

(ふかみん)
 それって田中泰延さんがおっしゃるような、自分が表現したいことをアウトプットする、というのとは逆ということでしょうか?

(ホリケン)
 あ、それは僕の中では統合されてるんですよ。「嘘をつけ」と言っているわけではないんです。

 例えば、「ゆる言語学ラジオ」というYouTube LIVEをやってまして。チャンネル登録13万人ほどの最近人気の番組なんですけども、これくらい人が集まると、メディア取材なども入りだすんですよね。

 で、相方の水野が会社員なんですよ。会社員かつ一編集者として今後もやっていきたいので、謙虚さというものをアピールしていきたい。だから天狗になったりは絶対しないでおきたいんですよね。そうなると僕はあくまで役回りとしてメディア取材の時は調子にのってた方が良いんですよ。

 例えば「イベント大盛況でしたね」ときかれる。その時、二人とも「いやぁ、全然っす」「みなさんのおかげっす」みたいなことを言っていると、ヌルッとしたインタビューになってしまう。なので僕が役回りとして「僕たち天才だと思いましたね」といった発言をする。それに対して水野が「お前、調子にのるな」みたいなことを言うことでパキッとしたやりとりが生まれるんです。

 実際は僕自身常々謙虚な人間でありたいと思っているわけなんですが、それはそれとして、その場で会話が面白くなる役回りをやる、ということですね。これって、嘘をついているわけではないんです。

(ふかみん)
 演じてる、ということなんでしょうね。

(ホリケン)
 自分というものの幅があって、その中でどのように自分を見られたいかを決めて社会生活を送っていると思うんですね。
 
 ただ、コンテンツを作るとき、本音の「謙虚に見られたい」はどうでも良いんです。

 自分の中のギリギリOKな見られ方、露悪的な振る舞いなども、その方が面白ければやります。嘘ではない範囲の中でもっとも面白い結果を出す、ということを考えてます。なので、結果として好感度が下がるかもしれないですが、それは気にしないことにしてます。

(ふかみん)
 堀元さんの場合、完全に独立して活動しているので、誰かに媚びる必要もないですし、それが表現する上では力になっているのかもしれません。多少露悪的でも面白くなる方を選択できるというのはそういうことかもですね。

(ホリケン)
 ほんとは好感度上げたいんですけどね!

(ふかみん)
 率直な方だし、結果好感度あがるんじゃないですか。

(ホリケン)
 うーん、でもよく怒られてるんですよね。なんかそれはちょっとやだなぁと思いながら、しょうがないことなのかなと思ってます。

(ふかみん)
 怖いって言ってる人も、みてるうちに段々本質がわかってくるんじゃないでしょうか。面白くするために役回りとしてやってるんだ、ってことはみんな気づいてくれると思います。

(ホリケン)
 そうなるまで頑張りたいと思います。

■ 「ゆる◯◯学ラジオ」のフランチャイズ展開

(ふかみん)
 ところで、今後の活動予定で話せるものがあれば教えていただけますでしょうか。

(ホリケン)
 「ゆる言語学ラジオ」が上手くいったので、フランチャイズ展開しようと思ってました。

(ふかみん)
 おお! なんですかそれは。

(ホリケン)
 「ゆる(なんちゃら)学ラジオ」をいっぱい増やそうと思っていて、スポンサーつけるために動いているところです。「テラスハウス」とか「バチェラー」みたいな、リアリティ・ショーのフォーマットでおじさんたちがいっぱい集まってくる。

(ふかみん)
 画的にすごそう。内容はどんな感じになるんですか?

(ホリケン)
 まずは一次選考で喋りたい学問について喋っている動画を送ってもらって、ふるいにかけます。10人程度に絞り込んだら、2泊3日、海沿いの家とかに集まる。おしゃれな家の玄関をガチャッと開けて、一人目が入ってきて、お、誰もいないな?みたいな。

(ふかみん)
 ヤバいですね。面白そう。

(ホリケン)
 次の人が入ってきて、挨拶しつつ、会話がはじまる、みたいな。

(ふかみん)
 「ゆる◯◯学」の人が次々と入ってくるんですね。

(ホリケン)
 そこに人があつまって、ざっくばらんにやりとりしているうちに、テラスハウスだったら恋が生まれるんですが、今回の場合は、実際に掛け合いなどをやってみて、気が合う人を探すんです。

 その家の中には、常時配信ができるような機材が揃っていて、「じゃ、やってみる?」となったらいつでも配信できる。そんなイメージです。ジャズのセッションみたいな。そして一日の終わりに、仮コンビを決めてもらって、僕らが審査員をやる。「Nizi Project」みたいな感じです。

(ふかみん)
 そんなんみたことないけど、いいですね。見てみたい。

(ホリケン)
お互い切磋琢磨したり、コンビを入れ替えてみたり、というのをやっていく。

(ふかみん)
 賢くて、面白くて、しゃべれる人が、どんどん堀元さんたちのところに集まって来る予感がします。

(ホリケン)
 最終選考ではそういう人だけ残したいと思ってます。そこで生まれた番組はもう文脈もあるので、そのままよい滑り出しができるんじゃないかと思っていて。

(ふかみん)
 最強かもしれない。楽しみです。
 
 本日はいろいろとお話をきかせていただき、ありがとうございました。

(了)


※初出 おたくま経済新聞

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